2018年03月20日(火)
便秘 [診療]
以前から多かったが、最近さらに便秘のお子さんがどんどん増えている。
もちろん、長期間便がでないということで来院される場合もあるが、保護者の方が自覚されていないことも結構多い。
別のことで来院されて、お腹の診察で便の塊を触れたり、咳がひどいので、胸のレントゲンをとった時、お腹に便がたくさんうつっていたりする。
小学生ぐらいのお子さんで、遺糞症で来院されるケースもあった。ひどすぎる便秘で、便の塊が直腸にあるため、その周りから便汁がもれでてしまう。また、激しい腹痛で救急車で来院され、浣腸してすっきり軽快ということも。
できれば、こういうことが起こる前に早めに治療したい。
便秘とは、排便するのにつらい症状を伴う状態のこと。毎日でていてもコロコロが少量しかでない、出すときに痛がって泣いたり、肛門がきれて出血するのは便秘になる。
硬い便で痛い思いをしたことのあるお子さんは、便意を感じてもでないように足をクロスさせたり、また部屋の隅で隠れてしゃがみこんだり、なかなかトイレで排便できずいつまでも便だけはおむつにすることが多い。
便が硬い→ 排便に苦痛を伴う→ ガマンする→ ますます硬くなる、という「便秘の悪循環」をなんとしてもたちきらないといけない。
まずは、ディスインパクションといって、たまった便をすべて出すことが一番大切。
外来で、浣腸すると、とっても大きな便がびっくりするぐらいたくさんでる。直腸、S字結腸をからっぽにすることで、腸管機能が改善するので、毎日浣腸が必要な場合もある。
そのあとに、生活習慣の改善や食事療法に加えてお薬を処方することも多い。
とにかく、本人に、苦しくなく痛くない排便をしてもらい、便をすることは怖いことでない、快適なことと思ってもらう。
下剤も便を柔らかくするものや腸を動かすものがあるし、他にも漢方薬もある。
慢性化している場合は一度出ても、最低2週間は毎日出すようにする。その後減量・中止していくが、多くは数ヶ月〜年単位の治療が必要。
また排便日誌をつけてもらうことも大切。
ある小児外科の先生は、排便日誌なしでは便秘の治療は考えられないと話されていた。
浣腸やお薬はくせにならない。便秘がくせになっている。
そして何よりも早寝早起き朝ごはん、適度な運動、朝うんちを目指したい。
便秘について「小児慢性機能性便秘症」のHPに詳しく乗っている
排便日誌もここからダウンロードできる。
もちろん、クリニックでもお配りしているので、気になる方はご相談ください。
Posted by さかざきひろみ at 20時47分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2018年02月04日(日)
集団免疫 [診療]
先週1週間、水曜日をピークにすこしインフルエンザの患者さんが減ったよう。
改めてグラフにしてみると、12月になって少しずつ増え、冬休みでいったん減少。園や学校がはじまってから一気に流行。
そういえば、私の小さいころインフルエンザの集団接種があったことを思い出した。矢野だったので、出席番号が後ろで注射の順番が最後の方だったのが、とても嫌だった。
皆が「今年の痛い〜」というのを聞いて、ドキドキしてた。
今のお子さんはワクチンもそうだけど、あと鼻の検査という辛いことがいっぱいや。
YAHOOニュースでこんな記事を見つけた。
「小中学生のワクチン集団接種 をやめたら、インフルエンザ で亡くなるお年寄りが増えた。なぜ」
その中に出てくるこの表は、慶応大の研究で、都内のある小学校を24年もの間、インフルワクチンの接種状況と学級閉鎖との関連を観察してきたもの。
ただ、昔はインフルエンザの検査がなかったので、元気な隠れインフルはカウントされていない。その子たちは普通の風邪として登校していた。しかし、それでも典型的なインフルエンザは増えずに学級閉鎖も増えなかったのだ。さらにこの記事によると、集団接種をすることによって、高齢者がインフルエンザで重症化することも防ぐことができていた。小さいお子さんたちの脳炎脳症もこのほとんど接種しない時期から増えてきたように思う。小学生が集団接種して、流行を最小限に抑えることによって、高齢者や小さいお子さんたちを守ってくれていたのかもしれない。
これは、ほかのワクチンにも言えることだ。
1才こえて、皆が麻疹風疹ワクチンを2回接種することによって、集団免疫で、1才未満の小さいお子さんたちを守ることができる。また妊婦さんが風疹に罹ることを防ぐことができる。もちろん水痘ワクチンやムンプスワクチンも同様。ロタワクチンも現在接種率が大阪でも50%をこえ、昔のようにロタが大流行することはなくなった。
この記事の中にも記載されている図だが、これは以前私がワクチン講演会で使ったスライド。
上はワクチン未接種(青)が多い集団。
感染者(赤)がいるとあっという間に病気(赤)が広がる。
下はワクチン接種(黄)が多い集団。
感染者(赤)がいても、感染の拡大は最小限に抑えられる。
ワクチンはもちろん自分のために接種するのだけど、実は周りの皆を守るためにも接種するのだ。ワクチンの接種は、自分のため、そして周りの皆のためなのだ。
インフルエンザの大流行も、きっとあと少し。
これから、受験シーズン。
皆様、体調管理に気を付けて頑張ってくださいね。
Posted by さかざきひろみ at 09時34分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2018年01月23日(火)
インフルエンザの治療法 [診療]
西洋医学的治療法は、
1)タミフルの内服
顆粒とカプセルがある。
カプセルを飲めるのは体重は37.5kg以上
お子さんはほとんどが顆粒だけど、これが苦い。
そのまま飲めない場合も多く、アイスと混ぜると飲みやすい
2)イナビルの吸入
吸入は1日だけ。
10歳未満は1キット(2回吸う)10歳以上は2キット(4回吸う)
1日だけなので便利だけど、小さいお子さんは吸いにくい。
だいたい6才以上が目安。
5才でも上手にできるお子さんもいるが、9才でもむせてしまう場合もあり。
1回分だけなので、失敗できない。
3)リレンザの吸入
朝夕吸入で5日間
粉がイナビルに比べてむせにくく、少し甘い
4才ぐらいでもできる場合がある。
失敗しても5日分ある
4)ラピアクタの点滴
通常は1回だけ点滴
これは、上記がどうしてもできない場合や入院するような重症例に考慮。
これらはどれもインフルエンザウイルスを死滅させるものでなく、増殖を抑える。したがって、熱がでて48時間以内に処方する。ただ、これらの抗インフルエンザ薬を使わないと治らないというわけでない。タミフルが発売されたのは2001年。それまでお薬はなかった。
実際、外来でもすでに48時間以上経過した例や、お薬なしで治っているケースも多い。
また、早期にタミフルなどを使っても、すぐに解熱せず高熱が続くケースもある。
西洋薬と併用して漢方薬治療もある。(もちろん単独でもよい)
これは、主にお子さんの場合。
高熱がでて悪寒があるようなときは、麻黄湯か葛根湯を3時間おきに内服。
他にも初期には、高熱でひどい症状のときは大青竜湯(麻黄湯∔越婢加朮湯)。
熱がでず寒気ばかりする時やご老人の場合は麻黄附子細辛湯。ご老人や体力ない人は麻黄湯は避けたほうがよい。
汗をかいたら、小柴胡湯や柴胡桂枝湯などの柴胡剤に切り替える。咳がひどくて、夜間眠れないときは、竹茹温胆湯。
そして、もう登校登園してもいいころなのに、いつまでも食欲がもどらない、だるさがとれないときは補中益気湯。
(上の図は、代表的な一部だけで実はもっとたくさんの種類がある)
このように、漢方薬は個人の体質や病気の時期によってお薬が変わり、個人の免疫力をあげて、インフルエンザウイルスによって炎症を起こした体に対して抗炎症作用がある。
元気だったら、西洋薬だけで十分かもしれないけど、しんどいときやなかなか治りにくいときは漢方薬の併用がお勧め。
受験生で、インフルエンザに罹りたくないという場合には、補中益気湯を内服するという方法もある。体質によっては、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、小建中湯なども有効。
Posted by さかざきひろみ at 18時30分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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