2013年06月16日(日)
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の積極的勧奨の一時中止 [診療]
金曜日夜、HPVワクチンの勧奨が一時中止されることになった。
「勧奨の中止」は「接種できない」という意味ではない。現時点では接種は可能である。
以前から問題になっている、「複合型局所疼痛症候群」Complex regional pain syndrome(CRPS)とワクチンとの因果関係が問題となって、はっきりするまで積極的勧奨が一時中止となったのだ。
CRPSとは、外傷(骨折・打撲・捻挫・注射など)をきっかけとして、慢性的な痛み(慢性疼痛)が起きる。慢性疼痛に加えて、局所の浮腫、皮膚温度の異常、発汗異常などの症状を伴うこともある。手足を動かせなくなったり、もともとの外傷を受けた部位だけでなくて、全身に広がって行く事があるらしい。
このCRPSについて、他のワクチン接種や点滴、採血、献血などでも起こりうる可能性があり、頻度は50万〜150万接種に1回。HPVワクチンは現在のべ約820万接種され、現在も回復されていないCRPSの方は8例報告されている。
一方、子宮頸がんは20〜40歳までの若い方の発症が増加している。新たに年間約15000人の方が発症し、約3500人の方が亡くなられている。
今回のことで保護者の方は非常に混乱されるに違いない。
お子さんが接種してCRPSを発症するのも不安だし、かといって接種せずに、将来子宮頸がんを発症するかもしれないのも不安に違いない。もしワクチン接種しないことを選択して、将来お子さんが、子宮頸がんを発症してしまったらどんなにか辛いことだろう。
ワクチンも医薬品なので100%安全なものはあり得ない。ただ、病気に罹ったときのリスクとワクチンの副反応のリスクを比べると、明らかに病気に罹患したときのほうが危険なのでワクチン接種するのである。
もちろん、私の娘はHPVワクチンが発売されてすぐに接種した。その際インフルエンザワクチンと同時接種したのだが、彼女に痛い?って聞いてみたら、インフルエンザワクチンと同じぐらい、らしい。
今後、子宮頸がんワクチンを接種を希望される方には
@子宮頸がん発症のリスクとワクチンの効果について
A現在、ワクチンは積極的勧奨が一時中止されていること
Bワクチン接種で、CRPSが起こる可能性があること
以上の3つについて、保護者の方にしっかり説明して、ワクチン接種していきたいと思う。
Posted by さかざきひろみ at 09時13分 トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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