2023年10月26日(木)
新作 [漢方薬]
フローチャートシリーズの新作は、「フローチャート産業医漢方薬」
このシリーズはもう何作目なのだろう。
どの本も、とてもわかりやすく、勉強になる。
産業医という言葉は知っていたが、実際にどんなものか知らなかった。
産業医とは、「事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導、助言を行う医師」とのことで、、働く人の病気の予防がメイン。
普通のクリニックの医師とちがって、治療や薬の処方をすることはない。
産業医の先生は、働く人たちが健康に働けるように色々なアドバイスをされる。まさに未病を防ぐということにもなるので 漢方薬がうってつけかも。
この本には、
職場を守る基本処方として
どんな働くひとにも
職場に常備の基本漢方
職場の肉体・精神疲労の基本処方
職場の人間関係に効く基本処方など、
いったいどんな漢方薬と興味深い内容ばかり。
ほかには、
働く人の風邪療養を支援する
働く人の胃腸を支援する
生活習慣病の就労を支援する
働く人のメンタルを支援するなど、フローチャート形式で色々な漢方薬がアップされている。
どんな処方か興味がある人はぜひ本を買ってみてね。
予想外に出番が多かったのは、137加味帰脾湯。
そして、これは私が執筆した最新号。
Posted by さかざきひろみ at 18時31分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2023年10月21日(土)
咳の漢方 [漢方薬]
外来では、インフルエンザもやや減少傾向。
コロナは少しだけ。
溶連菌感染症が一番多い。
これは、大阪市の感染症情報。
だいたい、同じような傾向。
咳をする人がとっても多い。
1日中というよりも、朝夕がひどくて昼間は元気。
原因としては、ウイルス感染、またはアレルギー。
秋花粉やまたダニも秋にとってもふえる。
そんな中、西洋薬の咳止めが品薄状態。
また、漢方薬の麦門冬湯なども品薄状態。
ただメーカーを選ばなければ、麦門冬湯もまだ十分処方できる。
乾燥した咳で、のどがいがいが、咳がこみ上げるときには㉙麦門冬湯ばくもんどうとう。これは、苦くないので、比較的飲みやすい。
湿った咳、喘息の咳には95五虎湯ごことう。
咳がひどくて、胸が痛いときは73柴陥湯さいかんとう。
これには、抗炎症作用も強い。千福先生おすすめの処方。
私自身はこれが好きかな。
咳がひどくて眠れないときには、91竹筎温胆湯ちくじょうんたんとう。
これには、精神安定作用のある生薬もたくさん含まれるので、すっきり眠れるようになる。
乾燥咳がひどくて、麦門冬湯がいまいちなときは93滋陰降下湯じいんこうかとう。とくに夜間の頑固な咳で、潤いがない場合に。
痰がとても多くて、咳が長引く場合には90清肺湯せいはいとう。
91竹筎温胆湯、93滋陰降下湯、90清肺湯には、潤す生薬の麦門冬が含まれる。
心因性の咳には、O半夏厚朴湯、または96柴朴湯。
この中で、錠剤があるのは、95五虎湯とO半夏厚朴湯のみ。
73柴陥湯、91竹筎温胆湯、93滋陰降下湯、90清肺湯はめちゃくちゃまずいので、お子さんにはあまり処方していない。
漢方薬は、咳止めと違って、気管支をうるおしたり、また抗炎症作用が強いものが多い。
咳で眠れなくなるのは、とても辛い。
西洋薬、漢方薬など色々使って、少しでも早くよくなりたい。
Posted by さかざきひろみ at 19時39分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2023年09月26日(火)
オキシトシンとオレキシン [漢方薬]
日本小児東洋医学会での特別講演。
「漢方薬の抗不安、抗ストレス作用の作用機序〜加味帰脾湯を中心に〜」
昭和大学の砂川正隆先生のお話。
ストレス反応を調節するオキシトシンやオレキシンのお話。
オキシトシンは、抗ストレス作用、抗不安作用、社会行動促進作用がある。また幸せホルモン、愛情ホルモンともいわれている。
オキシトシンを自然に増やすためには、ハグなどのふれあい、見つめあい、感動する、思いやりの気持ちなどがある。
オキシトシンを薬として投与する場合は、現在、日本では注射剤のみが認可されており、陣痛誘発・分娩促進などに保険適用がある。
他には、自閉スペクトラム症の治療薬として、オキシトシン経鼻スプレーが候補にあがっていて、色々研究されている。
承認はまだされていないが、オキシトシンは、社会的コミュニケーションの障がいに関して効果があるとのこと。
漢方薬では、加味帰脾湯が、オキシトシンの分泌を増やす作用があり注目されている。
特に加味帰脾湯に含まれる大棗、当帰、生姜にその作用があるとのこと。
他にも当帰四逆加呉茱萸生姜湯や補中益気湯、当帰建中湯にもこの3つが含まれている。
ただ、この3つの漢方薬にオキシトシンを増やす作用があるかどうかはまだわかっていない。
さらに、ストレスには、それを誘発するオレキシンというのがある。オレキシンは摂食行動や睡眠や覚醒をコントロールする神経物質。
オレキシンが分泌されることにより脳内が覚醒状態となることより、オレキシンを抑制するベルソムラやデエビゴという薬が不眠症の治療薬として使用されている。
漢方薬で、このオレキシンを抑制するのが、抑肝散や加味逍遙散。
特に柴胡や蘇葉にその作用があるらしい。
抑肝散には、不安幻覚に関するセロトニン神経系を介する作用や攻撃興奮に関するグルタミン酸神経系を介する作用もある。
大昔に作られた漢方薬が、現在になってその作用が色々研究されているというのがとても興味深い。
Posted by さかざきひろみ at 19時47分 パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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