2024年06月25日(火)

54番抑肝散 [漢方製剤]

よくかんさん。
とってもメジャーな漢方薬。

抑肝散は肝を抑えるという意味の薬。

東洋医学の肝は、精神安定、自律神経の調節、感情のコントロールをするところ。
抑肝散はその肝が高ぶって、興奮したり、怒ったり、イライラしたりする精神症状を抑えるという意味がある。

もともとは、明の時代の小児科の教科書、保嬰撮要(ほえいさつよう)に子どもの夜泣き疳の虫に有効と記されている。

また、子どもの夜泣きや疳の虫がひどいと、お母さんもイライラしてしまい、それが子どもに伝わりさらに悪化するために、お母さんとお子さんが一緒に抑肝散を飲むとより一層効果があると記されている。これが有名な母子同服。

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現在では、子どもだけでなく、老人の認知症にもよく処方され、子どもから老人まで幅広く処方されている。抑肝散はグルタミン酸系やセロトニン系の中枢神経系に働き,興奮の抑制に作用することがわかっている。ほかにもレム睡眠とノンレム睡眠のバランスをとって、睡眠の質がよくなるともいわれている。

臨床応用としては、不眠症、夜泣き、チック、神経発達症、多動、泣き入りけいれん、疳の虫などたくさんの出番がある。
さらに、身体表現性障害、疼痛性障害などにも処方されている。

柴胡(サイコ)は精神的な緊張を和らげる。釣藤鈎(チョウトウコウ)は、 高ぶった精神をおさえ緊張からくる筋肉痙攣を和らげる(興奮を鎮める作用)。
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)は、血行を改善する。蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)は水のバランスを整える作用。甘草(カンゾウ)は、緊張を和らげ、他の生薬との調和をする。まさに、気血水の絶妙なバランスのとれた薬。

抑肝散が必要な怒りや興奮が長期化すると、胃腸が弱って、疲れてくる。したがって、慢性的に経過しているタイプ、もともと虚弱タイプには、抑肝散加陳皮半夏のほうが有効であることが多い。実際こちらの方が味が飲みやすい。

Posted by さかざきひろみ at 18時37分   パーマリンク   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

2024年06月23日(日)

いつまで

外来では便秘で通院されているお子さんがとても多い。

便秘の定義は、排便が週2回以下、または便が硬くて苦痛をともなう場合。
しかし、毎日排便があっても、便が硬かったり、コロコロした便の場合も便秘になる。

毎日排便しているけれど、腹痛を訴えるお子さんのお腹のレントゲンをとると、お腹の中は便だらけということがよくある。このような隠れ便秘も結構多い。

便秘の治療は、まずはたまっている便をすべてだすことが大切。それから維持療法となる。

2歳未満は、ラクツロースシロップや酸化マグネシウム。
2歳以上はモビコールを処方することが多い。
これらの薬を飲んでも毎日でないときは、浣腸またはテレミンソフト座薬、レシカルボン座薬などを併用する。

モビコールを飲んでいると、順調に排便が見られることが多い。その場合、いつまで飲むのかがとても難しい。

便秘の治療を始めたら、薬は年単位で飲むことが多い。
大腸の一番下のお尻の近くに便が降りてきたら、うんちを全部だす習慣がつくまで薬が必要となる。
もともと、便をためる傾向になっていたので、便秘になったので、この便をためる状況を改善するのに時間がかかる。

理想は、常に直腸のところは、空っぽで、そこに便が降りてきたら、排便反射で直腸が収縮して、楽にウンチがでる。

それが確立されていないのに、薬をやめてしまったら、かえって薬を使う期間が延びてしまう。

まずは、薬を使って、規則正しく毎日ウンチをするクセをつけることが大切。

根気よく、すっきりウンチがでるまで頑張ろうね。
そのためには、便秘日誌もかかせない。

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Posted by さかざきひろみ at 19時32分   パーマリンク   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

2024年06月22日(土)

マイコプラズマ [クリニック情報]

今週も手足口病が増えている。

あとアデノウイルス、溶連菌感染症。
そして、久しぶりにインフルエンザA。
ちょっとびっくり。

大阪市の感染症情報は以下のとおり。
やっぱり手足口病がトップ。
新型コロナがじわっと増えている。

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他にも、マイコプラズマ感染症。
これは4年に1回、オリンピックの年に流行すると言われている。

マイコプラズマとは?
ウイルスと細菌の中間の性質と大きさを持つ病原体で、肺炎、気管支炎などおこすが上気道炎症状のみのお子さんもいる
感染経路 
@咳・くしゃみなどの飛沫感染
A病原体がついた手で目や口、鼻などを触ることによる接触感染
潜伏期間 2〜3週間。他の感染症に比べて長いのが特徴。

症状
とにかく咳がひどい!
(はじめ乾燥した咳→痰がらみの湿ったしつこい咳)外来で待っている間もとにかくずーっと咳がとまらない。また、咳は発熱から遅れて始まることも多い。

大きいお子さんでは熱もなく元気で、咳だけが続いていることもある。乳幼児はかかっても肺炎にならずにカゼで終わることが多く、 年長児の方が肺炎になりやすい傾向にある。
マイコプラズマになって、肺炎になるのは、全体の3-5%。
発疹がでることもある。

診断
迅速診断できる方法があり、クリニックでは主にこれを使用している。しかし、感度が低く偽陰性にでることも多い。
また、のどの奥を綿棒でゴシゴシするので、お子さんにとっては、辛い検査。本当に必要な場合だけに検査をするべきと思う。総合病院では、PCR検査があって、比較的早期でも診断できる。

治療
マクロライド系(クラリス)が第一選択。
耐性の場合は、オゼックスや9歳以上ならミノマイシン。
今シーズンは今のところ当院でクラリスが無効であったのは2例だけ。

軽症例に最初からミノマイシンやオゼックスなどのニューキノロン系を安易に使ってしまうと、さらに多剤耐性のマイコプラズマになる可能性がある。
また、ミノマイシンは9才未満の小さいお子さんは歯が黄色くなったりするので、使えない。
さらに、免疫反応が強く出てステロイドが必要な場合もある。
自然治癒例もあるのでお薬は慎重に選びたい。

Posted by さかざきひろみ at 19時11分   パーマリンク   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

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